そろばん式脳トレーニング〜初級〜【4】補数はいくつ?

 「認知症予防にそろばんは有効か?」と問われれば、「そろばんの使い方による」というのが一番誠実で、真実を示す答えです。そろばんを単なる計算道具としての使い方しかしなければ、脳の活性化や認知症予防には極めて限定的な効果しか得られません。

 認知症の予防や改善を目的として、そろばんを使うのであれば、どの要素が有効なのか、ということをきちんと検証する必要があります。そろばんの全ての要素が認知症予防や改善につながるわけではないからです。

 今回は、「補数はいくつ?」という課題を紹介します。これは、そろばん学習でも使われる要素ですが、この要素を学習し始めた時に脳がしっかり活性化してくれます。

目次

補数はいくつ?

そろばん式脳トレーニング 初級 「補数はいくつ?」

ルール

 動画では、一つずつ、「黒で書かれた数字(黒数字)」か「赤で書かれた数字(赤数字)」が出てきます。これを以下のルールで読み替えます。

●黒数字が出た時は、あといくつで10になるかを答える。
●赤数字が出た時は、あといくつで5になるかを答える。

画面の切り替わるスピードについて

 画面(単語・言葉)の切り替わるスピードは、この基本動画では、「ゆっくり」「ややゆっくり」「普通」「やや速い」「速い」の5段階あります。ご自身にあったスピードがわかったら、チャンネル内にあるスピード別の動画にもチャレンジしてみましょう。

トレーニングのポイント

使用しているそろばんの要素

 そろばんでは、あといくつで5になるか、あといくつで10になるかを考えるという要素があります。これは珠算学習の初期段階では、かなり意識的に考えながら使わなければならない要素です。この、あといくつで5になるか、あるいは10になるかというのを補数と言います。

通常のそろばん学習では薄れていく効果

 そろばんでの計算が上達すれば、いちいち補数を考えなくても、そろばん操作ができるようになります。そうならなければ、珠算(=そろばんを使っての計算)で速く正しい計算結果を出すことができないからです。しかし、考えなくてもできることでは脳は活性化してくれません。よって皮肉なことに、珠算の腕前が向上すればするほど脳への刺激は薄れていくのです。

 珠算技能が向上しても、そろばんを操作することで、ある程度、前頭前野という脳の部位は働いてくれます。しかし、認知症予防のためには前頭前野への働きかけだけでは不十分であることも事実です。

「補数はいくつ?」が効果的な理由

そろばん熟練者でも効果が薄れない

 光トポグラフィー装置という、脳の血流量の変化パターンを可視化する装置があります。この装置を使った実験では、初めてそろばん学習をしてからしばらくの間、あるいは、珠算熟練者でも久しぶりにやった場合には脳が活発に動くことがわかっています。しかし、日常的に珠算をしている人は「脳の慣れ」のために脳への刺激が薄れていきます。

 今回、ご紹介している「補数はいくつ?」では、そろばん熟練者で日常的にそろばんを使って計算をしている人でも、光トポグラフィー装置を使った実験で脳の活性化の効果が得られることが証明されています。

脳が最も活性化する、そろばん学習初期を再現

 珠算では、きちんと指使いや、そろばんの珠(たま)を動かす順番のルールを身体(指)に覚えさせることで計算技能の向上を獲得します。このことは、そろばんを使って、速く、正しく、計算結果を出すという目的を達成するために必要です。
 ただ、計算結果を速く正しく出すのではなく、脳の活性化、認知症予防が目的の場合は、身体(脳)が覚えてしまったものでは、効果は限定的です。

 「補数はいくつ?」は、そろばんの学習初期の、最も脳が活発に活動する状況を再現するトレーニングになっています。

脳が慣れてくればアレンジを加えることができる

 珠算のコンセプトが、速く正しく計算結果を出すことである以上、わざわざアレンジを加えて、計算結果を導くのを遅くすることはないでしょう。
 そろばん式脳トレーニングの目的は、計算技能の向上ではなく、あくまでも、脳の活性化、認知症予防なので、慣れてきた頃に適切なアレンジを加えます。そろばん式脳トレーニングの認定指導員や上級インストラクターは専門の研修を受け、珠算であっても脳の活性化に有効なトレーニングを提供しています。

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