そろばん式脳トレーニング〜初級〜【5】声を聞き分け手を叩こう

 今回、ご紹介するトレーニングは、聴覚を使うトレーニングです。聴覚は認知機能にも大きな影響があり、実は、海外の研究成果でも、耳の聞こえにくさ、難聴は認知症の大きなリスク要因であるということがわかっていて、中年期に難聴があると高齢期に認知症のリスクが約2倍になるというデータもあります。

 認知症の危険因子としては、加齢や高血圧などは、よく挙げられますが、耳の聞こえにくさや難聴は見過ごされがちです。難聴の程度が進むとコミュニケーション不全になるケースが多くなります。コミュニケーションの頻度が減ることで、脳へのインプット、アウトプットの量も減少し、脳への刺激も減り、どんどんと脳の活動量が減っていくという悪循環に陥ります。

 耳の聞こえにくさは加齢とともに徐々に進行することが多いこともあり、なかなか自分自身では気付きにくいというのも盲点です。

 そこで、今回は、聴覚を使うトレーニング、「声を聞き分け手を叩こう」をご紹介します。

目次

声を聞き分け手を叩こう

そろばん式脳トレーニング 初級 「声を聞き分け手を叩こう」

ルール

 動画では、女性、もしくは男性が、「はい」と発声します。その「はい」の声を聞いて、以下のルールで手を打ちます。

●女性が「はい」と言えば、手を1回叩く。
●男性が「はい」と言えば、手を2回叩く。

発声の間隔について

 「はい」と発生する間隔については、この基本動画では、「長い」「やや長い」「普通」「やや短い」「短い」の5段階あります。ご自身にあった間隔がわかったら、チャンネル内の説明欄にあるスピード別の動画にもチャレンジしてみましょう。

トレーニングのポイント

使用しているそろばんの要素

 珠算の種目に、読上算(よみあげざん)とか、読上暗算(よみあげあんざん)というものがあります。読み手が「ご破算でで願いましては・・・」ではじめて、例えば、

 351円なり
 299円なり
 605円なり
 941円なり
 783円では

というように読み上げていき、それを、そろばん、もしくは暗算で計算する種目です。読上算は、大人の脳の活性化にも効果のあるものですが、この要素を、そろばんや計算を使わずに再現したトレーニングが、今回の「声を聞き分け手を叩こう」です。

いつも同じ人の声では脳が慣れてしまう

 読上算や読上暗算を、いつも同じ人、同じ声で練習をしていた人が、ある日、違う人の違う声で読上算や読上暗算をすれば、いつもよりも活発に脳が活動します。いつも同じ声で情報を処理していると、脳はその処理に慣れてくるからです。

 この動画では二人の声でトレーニングをしていますが、都度、違う人、違う声でトレーニングができれば、もっと効果は出るでしょう。

「声を聞き分け手を叩こう」が効果的な理由

目的は珠算技能向上ではなく脳の活性化

 珠算技能の向上を目的とするならば、いつも同じ声で練習しても目的を達成する練習はできます。むしろ、たびたび違う人の声で練習するよりも、いつも同じ声で、できるだけ聞きやすく、大きな声で、はっきりと発声してくれる読み手の読上算の方が練習になるでしょう。

 一方、そろばん式脳トレーニングの目的は、あくまでも脳の活性化です。大人の脳の活性化という目的のためには、聞こえてくる声や音そのものを聞き分けるという要素が入ったトレーニングは効果的です。逆に、この要素は計算技能の向上を目的とするならば逆効果と言えるでしょう。

手を叩くことで脳の刺激が得られる

 手を叩くことで、そこで得られた刺激が脳に伝わります。拍手をした時の脳の動きを解析したところ、脳が活発に活動したという研究結果もあります。理想を言えば、一人でこの動画でトレーニングをするよりも、多くの人と一緒にやると、さらに脳の活動量が増えます。

できるだけ一定のリズムで

 今回のトレーニング動画では、発声の間隔が短いものから長いものまでありますが、どれも一定のリズムで発声されています。できるだけ、このリズムに合わせて一定のリズムで行うことを意識しましょう。実は、脳の活性化に「リズム」というのは重要なファクターとして関係しています。そろばん式脳トレーニングの他の課題もリズムを意識することで、効果は高まりますので、このことは是非、覚えておいて下さいね。

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