他人と比べるのはやめましょう

 そろばんでも勉強でもスポーツでも、自分の子供をお友達と比べて考える方がいます。他人と比べるというのは、中長期的な視点で見ると、良い結果をもたらすことはあまりありません。

 他人と比べるのではなく、過去の自分と比べて成長できてるかどうかが大切です。最近では、こうしたことを主張する人も増えました。しかし、なぜ、他人と比べるよりも過去の自分と比べるべきなのか、について、きちんと説明されているものは意外と見かけませんので、今回は、このことについて書いておきたいと思います。

自分自身の成長に目を向けましょう。

 子供達は発育、成長の個人差が大きいからということも、もちろんありますが、その話は後半でするとして、前半では大人であっても、他人と比べるよりは、過去の自分と比べて、その成長を目指していく方が、より自分自身の人生が豊かになりますよってことを確認しておきたいと思います。

他人と比べるのは相対的な評価

 「他人と比べる」というのは相対的な評価です。よって、比較対象によって自分のポジションは変わります。自分より(勉強だったりスポーツだったりが)できる人の集団に入ると自分は「できない」方に属しますが、自分よりできない人の集団に入ると「できる」方に属します。当たり前ですね。

 「他人と比べる」というのは、相対的に自分を位置付けるということです。そのような相対的な評価で他人と比べて上に行こうと思えば、自分が知ってるコツやノウハウ、知識を他人(ライバル)に教えたり知恵を授けたくないかもしれません。教えると、教えられた人も伸びますから。
 「他の人に教えたくない」というのは、まだマシで、ひどくなると、(比較対象となる)人の邪魔をしたり足を引っ張ったりする人も、ごく少数ですが、でてきます。

他人が伸びなければ自分が優位に

 これは自分が努力しない分、楽に感じるかもしれません。自分が成長しなくても、あるいは、自分の成長がそれほどでなくても、比べる対象の人がつまずいたり、自分の成長より遅ければ、自分のポジションが優位になりますから。

 人にアドバイスしなかったり足を引っ張るのは論外として、そうでなくても、他人と比較すると本来の成長のスピードが得られなくなるケースがほとんどです。成長の速い人と比べて焦ってしまったり、遅い人と比べて安心してしまったり。大人も子供も成長のスピードはそれぞれ。中長期的に見れば、過去の自分より成長できているかをチェックすることで、自分自身に最も合うスピードで成長することができます。そして、結果的にそれが、その人にとって最も速いスピードでの成長を獲得できるのです。

AI時代(人工知能の時代)に必要なこと

 他人と競争することが大好きで、それで成長する人も一定数います。これについてはAI時代(人工知能の時代)に必要な人としての資質にも関係する深いテーマになりますので、またの機会に言及します。

子供は成長過程なので個人差が大きい

 そして、子どもの成長について。特に子供の頃は、身体も脳も、その発育・成長の個人差がすごく大きいということを忘れてはいけません。
 身体の場合は、例えば、小学校までは背の小さかった子が中学ですごく身長が伸びて、高校になった時には、他の子よりもうんと高身長になっているというケースもあるでしょう。身体(身長)の成長の差はそんなに気にしないけど、学力は気にするという方も多いですが、脳の発育も個人差が大きいです。私はこれを「早熟型の脳」「晩成型の脳」と呼んでいます。「晩成型の脳」の子に、焦って詰め込み教育をすると、利よりも害の方がはるかに大きいので、ここは注意が必要です。
※「早熟型の脳」「晩成型の脳」については、「当学院の幼児教育メソッド」のページに詳細を書いてありますので、詳しく知りたい方は、そちらを参考にしてください。

先取り学習に走り泥沼化

 「晩成型の脳」の子を、お友達と比べて、焦って先取り学習に走ると泥沼に陥ります。最も多いのが、最初は良いけれども、学習が進むにつれ、早い段階で難しく感じてしまい自信を失うというパターンです。本当に多いです。「早熟型の脳」の子より早く始めたのに抜かれてしまい、余計に自信を失うという悪循環にも陥ります。

非認知能力を育むことの重要性

 テストの成績など数値で表すことのできる能力を認知能力といいます。認知能力だけで言えば、「晩成型の脳」の子は「早熟型の脳」の子と比べてしまうと自信を失うことになります。しかし、物事への取り組み方や好奇心、頑張る力、やり抜く力などの非認知能力を伸ばしてやれば、長い目でみれば、追いつき、追い抜くことも可能です。

 「晩成型の脳」の子でなくても、お友達と比べられて、自分はダメだと思ってしまったり、やる気を失ってしまったり、自分自身の価値を信じられなくなってしまう子も多くいます。

他人と比べるから自分自身に誇りを持てなくなるんです。
他人と比べるから自信が持てなくなるんです。

 そうではなく、3ヶ月前の自分、半年前の自分、一年前の自分と比べて成長してるか、ということで成長をサポートすれば、長い目で見た時に必ず良い人生を歩むことができるはずです。

“本物の人”は他人と比べない

 長らくトップに居続けられる“本物の人”は基本的に他人と比べることをモチベーションとしません。また、前人未到の領域に達する人も同様です。メジャーリーガーの大谷翔平選手は誰もやったことのない領域に到達していますが、彼は基本的に自分自身を他人と比べることはしません。

人生のゴールは・・・

 人生のゴールは高校受験でもなければ大学受験でもありません。人生というスパンで見た時に良い人生を歩むには、自分のプラスに目を向けること。他人と比べないこと。間違っても他人のマイナスに目を向けることに時間を使わないこと。人生はあっという間。自分自身のことに時間と力を注ぎましょう。そして、子どもの力を信じてあげましょう。