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そろばんのデメリットと、向いていない人|そろばんを教えてきた私たちが正直に書きます

 そろばんのデメリットは、大きく3つあります。習得に時間がかかること。上達するほど脳への刺激が減っていくこと。そして「計算ができるようになりたい」だけが目的なら、もっと速い方法があることです。

ボケ防止にと思ってそろばんを始めたけど脳に効いてる実感がありません」

 そりゃそうです。子どもと同じように計算道具としてそろばんを使うだけだったら脳への刺激が次第に減っていくのは当然です。

 そろばんを教えてきた会社が書くことではないかもしれません。ただ、私たちは2005年からそろばんと脳の関係を調べ、大学の脳科学研究機関での実験を通じて、効果があるものと無いものを一つずつ確かめてきました。良い面だけを並べても、誰の役にも立たないと思っています。

 この記事では、そろばんのデメリットと、そろばんが向いていない人をはっきり書きます。そのうえで、それでもそろばんにしかできないことにも触れます。

目次

そろばんのデメリットは、大きく3つ

① 習得に時間がかかる

 これが最大のデメリットです。本を1冊読めば身につく、というものではありません。ある程度の期間、続ける必要があります。

 特に、そろばん道具を使わずに計算する「暗算」まで求めるなら、話はさらに面倒になります。珠算式暗算は、そろばんの練習を重ねているだけでは絶対に身につきません。大人が習得しにくいのは「頭が固いから」だと言われがちですが、根本的な原因はそこではありません。大人向けのトレーニング方法が別に必要だ、というだけの話です。

 ところが、子ども向けのそろばん教室で、大人が珠算式暗算を習得するためのノウハウを持っているところは、ほとんどありません。大人が「子どもと同じ教材で、子どもと同じ順番で」練習して行き詰まるのは、その人の能力の問題ではなく、方法の問題です。

 なお、大人は子どもよりはるかに速く上達します。「何年も通わないと身につかない」というのは、子どもの通塾期間から連想された誤解です。詳しくは大人が計算力(暗算力)をつけるために、そろばんを学習する最適な方法に書いています。

 例えば、商工会議所の珠算検定の3級。始める年齢や、一日にどれくらい練習するかにもよりますが、小学1年生で始めて、3級を一年で取得できる子は少ないです。しかし、大人の場合は1年で3級に合格できる人はそれなりにいらっしゃいます。
 また、暗算の場合、当社ノウハウで週1回レッスンを受けた大人なら半年程度で、2桁の数を4つ足し引きする計算を暗算でできるようになったりしますが、小学1年生で始めた場合、ここまで到達できる生徒はごくわずかです。

② 上達するほど、脳への刺激は減っていく

 意外に思われるかもしれませんが、これは私たちの実験ではっきりしていることです。

 珠算は、そろばんを使って早く正確に答えを出すことが目的です。そのためには、いちいち考えながら珠を弾いていては話になりません。ですから「考えなくても指が勝手に動く」状態を目指して練習します。

 自転車と同じです。乗れるようになるまでは頭であれこれ考えますが、一度乗れてしまえば、ペダルの踏み方など考えません。そして、この「考えなくても」が曲者なのです。

 考えなくても指が動くようになればなるほど、脳への刺激は少なくなります。言い換えると、珠算が上達すればするほど、脳の活性化という意味では効果が薄れていきます。

 つまり、認知症予防を目的にそろばんを続けても、上手になるほど効果は落ちていきます。「そろばんをやればボケない」という言い方は、この点で正確ではありません。理由の詳細は珠算が認知症予防に効果を発揮するためにはにまとめています。

③ 「計算」だけが目的なら、もっと速い方法がある

 正直に申し上げます。時間の計算、ポイント還元の計算、税金の計算——そういった特定の場面の計算だけで困っているなら、大人向けの計算術の本を1冊読むほうが手っ取り早いです。自分の困りごとに合った項目が見つかれば、そろばんほど時間を使わずに済みます。

 あるいは、計算はスマホでやると割り切ってしまうのも一つの見識です。大人には仕事も家事も子育てもあります。限られた時間をそろばんに割くべきかどうかは、人によって答えが変わって当然です。

そろばんが向いていない人

 ここまでを踏まえると、向いていない人ははっきりします。

  • 短期間で、特定の計算だけができるようになりたい人。計算術の書籍か、高機能な電卓アプリのほうが向いています。
  • 認知症予防のために、子どもと同じやり方で珠算を続けようとしている人。上達を追い求めるほど、目的から遠ざかります。
  • 数字への苦手意識が強いのに、数字を使った学習から入ろうとしている人。順番が逆です。先に必要なのは「数を認識する力」を鍛えることで、これは数字を使わずに行います。
  • 大人向けの指導ノウハウを持たない教室に通おうとしている人。同じ「そろばん」でも、子ども向けの教え方をそのまま大人に当てはめる場所では、時間だけが過ぎていきます。

「そろばんは意味なかった」と言われるとき、何が起きているのか

「そろばんは意味ない」「やったけど意味なかった」という声を、私たちもよく耳にします。ただ、その多くはそろばんそのものが悪いのではなく、目的とやり方が噛み合っていないケースです。

  • 目的が計算力なのに、暗算のトレーニングをしていない/そろばんを弾く練習だけでは、道具のない場面で使える力になりません。
  • 目的が認知症予防なのに、上達を追いかけている/②で書いたとおり、上達するほど刺激は減ります。
  • 目的が数字への苦手意識の克服なのに、数字で学んでいる/かえって嫌いになります。実際、大人向けの算数教室に通って「ますます数字が嫌いになった」という方が、弊社に来られたことがあります。

 目的別にそろばんをやる意味があるかどうかは、そろばんは大人がやっても意味がない?で整理しています。

子どもの習い事としては、意味がないのか

 ここは分けて考える必要があります。子どもにとってのそろばんは、有意義です。計算力はもちろん、創造力やイメージ力、言語野以外の部分を鍛えるという点で、確かな効果があります。

 問題は、その効果をそのまま大人に当てはめてしまうことです。

 陸上競技で例えます。マラソン選手に必要なのは遅筋と心肺機能です。その選手が短距離選手や投てき選手のように速筋を鍛えても、意味がないどころかマイナスになります。大人と子どもの脳トレを同じものとして扱うのは、これと同じことをしているのです。

 なお、そろばんを使わない「珠算式暗算」が認知症予防にどう効くのかについては、認知症のタイプ別に珠算式暗算(そろばん式暗算)は認知症予防に有効か?で解説しています。結論から言えば、ほとんど効果は得られません。

それでも、そろばんにしかできないこと

 ここまでデメリットばかり書いてきましたが、私たちがそろばんを手放さない理由もあります。

 計算や数字が苦手な人に共通しているのは、「数を認識する力」が弱いということです。そして「数を認識する」ことと「数字を認識する」ことは、まったくの別物です。この違いを知らないまま数字で学び続けても、苦手意識は消えません。

 では、どうすれば数の認識を鍛えられるのか。数字を使わず、脳が直感的に数を捉えられる道具を使うのです。そろばんは十進法の道具であると同時に、二五進法(にごしんほう)という特長を持っています。この二五進法があるおかげで、数の認識そのものを鍛えることができます。これができる道具は、他にほとんどありません。

 詳しくは数字が苦手な大人の計算力アップにそろばんが役に立つ理由をご覧ください。

私たちがデメリットを書く理由

 弊社は2005年から、そろばんを使った認知症予防の研究を始めました。大学などの脳の研究機関での実験を重ね、そろばん学習のどの要素が脳のどこに効くのかを、一つずつ検証してきました。

 その過程で分かったのは、一般に効果があると思われていた要素が意外と効かなかったり、逆に大して期待していなかった要素が思わぬ効果を発揮したりする、ということでした。

 例えば、珠算式暗算。最近のそろばん教室は珠算よりも暗算に力を入れているところが多いです。当社の子供向け教室もそうです。フラッシュ暗算ができる人を見ると、その能力に驚愕する人も多いことでしょう。子どもの脳トレ(学習効果や知的活動レベルの向上)には確かな効果はあります。しかし、こと認知症予防という点にフォーカスすると効果はほとんどありません。これは効果があると思われる要素が効かない例です。
 一方、「ゆっくりとそろばんを弾きましょう。でもリズム良く弾いて下さいね」というのは珠算技能の向上には繋がりませんが、認知症予防を目的とした場合には、とても良い効果が得られます。
 こうしたことは、ほんの一例です。

 だからこそ、「そろばんをやると認知症予防に効果的」という漠然としたイメージで取り組むことには反対です。何が効いて何が効かないのかをきちんと理解し、しっかりとした理論のもとで取り組まなければ、時間を無駄にすることになります。

 効果があると確認できた要素だけを取り出し、大人のために組み直したものがそろばん式脳トレーニング®です。珠算とはコンセプトもやり方も違います。初級講座ではそろばん道具すら使いません。その違いはそろばん式脳トレーニング®と珠算(そろばんを使った計算)の最も違う点にまとめています。

 そろばんを教えてきた立場だからこそ、そろばんにできないことを書いておく必要があると考えています。できないことをはっきりさせないと、できることの意味も伝わらないからです。

 取材のご相談を承っています。そろばんを使わない初級のトレーニングは、開発者の川西一仁が実演してご覧いただけます。あわせて、脳の活動量の違いが一目で分かる画像もご用意しています。トレーニングの内容は公式YouTubeチャンネルでも公開していますので、先にご覧いただくこともできます。ご連絡はお問い合わせフォームまたは 06-6848-6022(平日10:00〜18:00)まで。

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