上級以上のインストラクター年間更新制度について

上級以上のインストラクターは年間更新が必須の資格です。その意義について、ご説明しておきます。

目次

認知症介護現場の現状

 まず、このテーマの大前提として、弊社がなぜ認知症予防に力を入れているかというお話をしておく必要があるかと思います。

 認知症の方、および、その介護をされている方の現状をご存じでしょうか。もちろん程度によりますが、ご家族は想像を遥かに超えるご苦労をされています。
 かなり進行した認知症の方、そしてその介護をされているご家族の状況を目の当たりにしたことがあります。介護されていたご家族は想像を絶する塗炭の苦しみの中でもがいているという状況でした。認知症の母親の介護で行き詰まり、いわゆる介護殺人という事件を報道で知ってた私は、そういう事件に至らないかを本気で心配しました。それほど、ご家族の表情は生気を失い、筆舌に尽くしがたい凄惨な状況だったということです。私自身は第三者であるにも関わらず、その場から逃げ出したくなったことをよく覚えています。強烈な体験でした。

 こういう状況を作ってはならない。そのために何をすべきか?

 こうした問いを日々自分自身に投げかけました。

何をすべきかの答え

 認知症の苦しみや介護するご家族の辛い状況を作らない。その為に何をすべきか。自分ができることはなにか。これに対して出た結論は2つあります。一つは、本当に効果があって、かつ、楽しく続けられる認知症予防の為のトレーニングを追求しよう、ということ。そしてもう一つは、遍く皆さんに使って頂ける環境を作ろう、ということでした。

継続的な研究開発を怠らない

 開発の経緯のページで書きましたが、「そろばんは指先を動かすので認知症予防に良さそうだ」という漠然としたイメージでは真に効果のあるアクティビティ(活動)を見誤る可能性があります。きちんと脳科学的な検証、実験を行い、その結果に真摯に向き合い、効果のないものはそれを受け止め、改善・改良の手を加えていくということが必要です。

 それまでも、そろばんに関わる脳科学的な実験はされてはいました。しかし、そろばん(珠算)の専門家がきちんとした形でかかわったものはありませんでした。この為、珠算技能のレベルや種目(掛け算や割り算など)によって違いはあるか、解き方によって使っている要素が違うけれども、その違いはあるか、など多くの細かい部分の検証はされていませんでした。そこで、きちんと弊社が関わる形で研究、実験を行いました。すると珠算だけでは、少なくとも認知症予防という観点では効果が限られるということがわかりました。

 正直、そろばん関係の事業をやっている事業者としては、そろばん(珠算)では脳の活性化への効果が限られる、という実験結果には目を背けたくなります。しかし、それでは認知症予防の目的は果たせません。冒頭に書いた認知症患者の壮絶な介護の現状を無くしたい、というのが弊社の活動、志の礎です。だからこそ、だましだましの活動を行うのではなく、研究結果に真摯に向き合い、誠実に活動をしていくということは譲れません。

 しかし、そろばんを使った認知症予防の研究開発や実験には膨大な手間とコストがかかります。弊社は法人組織として活動をしているので金融機関から多額の資金調達を行っていますが、それでも手に余ります。
 さらに、脳科学の進歩というのは日進月歩です。脳機能はまだまだ未知のことが多く、研究により絶えず新しいことがわかってくるような状況です。よって、そろばん式脳トレーニングも折に触れて追加の実験などを行い、その理論やトレーニング法をアップデートしておかなければなりません。

 こうしたことを怠ることなく地道に続けていくことが必要になります。

活動の趣旨に賛同してくれる皆さんと協力する

 弊社の活動の拠点は大阪です。事業的には、首都圏に支店を出すなどは検討に値しますが、日本全国津々浦々に拠点を構えるのは現実的ではありません。しかし、認知症という社会問題は都市だけのものではありません。高齢化が進む地域は国内外や地域を問わず、「認知症対策」という社会で解決すべき課題が存在します。

 こうした課題の解決には、弊社一社の活動ではエリア的にはもちろん、量的にも到底足りません。そこで弊社単独で活動を行うのではなく、志のある企業、団体、組織、個人と協力しながら、共に取り組むことで少しでも認知症予防という活動を実のあるものにする必要がある、と考えました。

認知症予防活動を実現していくために

 「何をすべきか」に対する答えは見つかりましたが、それを実現するためには具体的な方策が必要です。その実現の為のスキームの一つが、そろばん式脳トレーニングのインストラクターを育成することであり、地に足のついた活動を、地道に末長く継続していくことです。
 年間更新は認知症予防活動実現の為に重要な制度で、2つの目的があります。

受講料をリーズナブルな額に

 そろばんを使った認知症予防の研究開発や実験には膨大な手間とコストがかかる、というのは既に述べた通りです。これらをペイする為の受講料にすると個人ではとても手の届かない額になってしまいます。また、いくら弊社が法人組織として資金調達をしていると言っても、手に余るというのも既に書いた通りです。

 やはり個人でも手の届く受講料にしないと、そもそもインストラクターを通じて、そろばん式脳トレーニングを活用してもらうこともできません。そこで上級以上のインストラクターには年間更新料を設定し、その分を研究開発の一部に充てることにしました。逆に言えば、リーズナブルな受講料でインストラクター養成講座を受講できるのは、これまでの上級以上のインストラクターの年間更新料があったからこそだということになります。

 なお、年間更新料を上級以上のインストラクターに限定しているのは、初級や中級のインストラクターは個人が、ご家族の為に学ぶということが多い為です。

活動を持続可能なものに

 認知症への対応という社会課題は非常に大きなものであるが故、短期間で目に見える成果が得られるというものではありません。認知症になってしまう方や、その介護で辛い思いをする方を減らす・無くす、というのは、粘り強く、息が長い活動を誠実に続けていくことが求められます。

 2〜3年、取り組んでものにならないから止める、ということでは認知症への対応という社会課題を解決することは叶いません。だからこそ、上級以上のインストラクター講座を受講される方には最初にこのことをお伝えし、粘り強く活動することをお願いしています。これが年間更新が必要な2つ目の理由です。

 そろばん式脳トレーニングの活動は、志を持った方に参加して頂いている社会的意義のある活動であることは確かですが、一方で、インストラクターの皆様の善意に頼ったやりがい搾取や、志に頼った志搾取にならないようしなければなりません。インストラクターの皆様の活動を持続可能なものにする為には、きちんと収益を上げられる環境は作らなければなりません。最初のうちは、なかなか収益につながりにくい状況かもしれませんが、社会に役立つ活動と事業化(収益化)のバランスを、できるだけ良い形、早いタイミングで実現して頂けるように弊社では広報活動にも力を入れています。

 弊社のポリシーの一つに、「新しい価値を創造し、社会に提供することで世界に貢献する」ということがあります。この志を共にし、認知症予防の為の活動を実践するインストラクターを弊社はサポートして参ります。

SNSでシェアしていただけると幸いです
目次