「そろばんは大人がやっても意味がない」
こうした声があります。何を目的とするかによって、もっと適した方法があるのは確かなので、今回は「大人がそろばんをやる意味があるかどうか」について、解説しておきたいと思います。ケースごとに解説していますので、目次から必要な項目をお読み下さい。
認知症予防の為の脳の活性化が目的の場合
従来の珠算学習だけでは効果薄
大人が、将来的な認知症予防の為の脳の活性化を目的とする場合は、従来の珠算、つまり、そろばんで計算をする、ということだけでは効果は薄いです。これは弊社が行った様々な研究でも明らかになっております。従来の珠算が大人の脳の活性化、認知症予防に効果が薄いのは、コチラのページに概要が掲載してありますので、ご確認下さい。
ただ、珠算をやるのが楽しいという方もいらっしゃいますから、趣味として生涯の楽しみとして続けるというのは、それはそれで人生が充実するでしょうから良いことだと思います。
従来の珠算学習+そろばん式脳トレーニング®なら有意義
目的が大人の為の脳の活性化であれば、そろばん式脳トレーニング®で、その目的を満たすことはできます。
そろばん式脳トレーニング®は、珠算とはコンセプトもやり方も違うものです。そろばん式脳トレーニング®と珠算(そろばんを使った計算)の違う点については、こちらのページに詳細がありますので、気になる方はご確認ください。
計算力をつけるのが目的の場合
電卓やスマホで良いと割り切る
計算力をつけたいと思えば、何をやるにしても大なり小なり習得までの時間は必要です。それならば、計算はスマホでやれば良いと割り切ってしまうというのも一つの方法です。忙しい中で、計算力を高める為に時間を使うかどうかは状況次第でもあるでしょう。
ただ、計算力があると得することが多いのも事実です。
生々しい話ですが、私自身も会社員をしていた当時、計算力があることで、上司や取引先から高い評価を頂くことが多かったです。数字に強いことで、かなり印象が良くなります。自分自身ではなぜそこまで高く評価をして頂けるのかな、と思うこともありましたが、なぜか、できるビジネスパーソンという評価を頂けたりもしました。
あるいは、弊社の大人コースで学習された方が仰っていたのが、パートに出た時に困った、ということです。商品の陳列をするときに、上手に綺麗に並べるためにはスペースを頭に入れて、できるだけきれいに整列させて並べたい。だけど、計算が苦手なせいで、並べる縦横の工夫などが本当に苦手、とのこと。
また、ある時には、ママ友とのランチ会で、スマホ(電卓)を使ったのに、会計の計算を間違ってしまって恥ずかしい思いをしたという声もありました。そもそも数字に対しての苦手意識が強いので、他の方が感覚的にわかる計算間違いに気付けなかったそうです。
そうなると、やはり少しでも計算力を高めたいというニーズが出てくるかもしれません。
そろばん以外の計算術を勉強してみる
今は大人向けの計算術の本などもたくさん出版されています。私も何冊か読んでみましたが、なるほどなと思うものもありました。自分にちょうど合うものが見つかる人もいると思います。
ケース別で計算のコツを指南している書籍であれば、そのケースに当てはまる計算に関しては、普段困らないくらいの計算力はつくかもしれません。例えば、時間の計算、ポイント還元の計算、税金の計算などでしょうか。そういった項目を解説した本もありました。
そろばん以外の計算術のメリットは、自分に必要な項目で自分に合ったものが見つかれば、そろばん学習ほど時間を使わなくても良いという点です。そろばんは少し長い目で見る必要はあります。少なくとも、本1冊読めば習得できるというものではありませんので、ご自身の計算ニーズ、項目に丁度合うものが見つかれば、お困りの計算力を克服する近道になります。
そろばんをやるメリットとデメリット
デメリットは習得にそれなりの時間がかかるということです。これが最大のデメリットでしょう。また、計算力を得たいということになれば、そろばん道具を使わずに計算する暗算力が必要になります。大人になってからそろばん式の暗算力を習得しようと思えば、子供と同じように練習していてもなかなか身につきません。子供向けのそろばん教室をやっているところでも、大人が珠算式暗算を習得するトレーニング方法のノウハウを持っているところはほとんどありませんので、そうした苦労もあるでしょう。
コチラは、弊社のコース紹介ページではありますが、大人が計算力、暗算力を習得するのに必要な考え方が記載されていますので、受講しない方にも参考になると思います。
正直、「計算」ということだけに限定すれば、他の計算術でニーズに合うものがあるのなら、その計算術を学習する方が手っ取り早いですし、スマホで済ませると割り切ってしまうのはアリだと思います。
それでも、大人がそろばんをやる意味、メリットは「計算力」だけではないものが身につく、という面があるからです。数、あるいは数的なものに対する感覚が高まるということです。
人は、時間や距離を感覚的に捉えています。例えば、
「向こうの電柱まで20mくらいかな」
「もう1時間くらい歩いたかな」
などです。
皆さんも、昔、小さかった頃、お母さんやお父さんに
「長い針が6のところに来たら(おやつなどを)食べて良いよ」
とか言われなかったでしょうか。あるいはご自身のお子さんにそう言うこともあるかもしれません。小さいお子さんがいるお家はデジタル時計だけでなく、アナログ時計も置いた方が良いのですが、これは、時間の感覚をつけつつ、数字というものを身近なところから学習するのに良い方法だからです。
時間や距離の感覚と同様、数や数的なものの感覚を高めるのに、実はそろばんは役に立ちます。これは、そろばんの特長とも関係します。(興味のある方はコチラのページも併せてご覧下さい)
ビジネスパーソンの場合、計算だけであれば電卓で事足りるかもしれませんが、大枠を把握する力や、分析力、予測する力などは、計算力だけなく、数的な感覚がないと高めることはできません。
最初の方で、私が会社員をしていた時に上司や取引先から高い評価を頂いたというのは、計算力そのものというより、数字に強く、計算力の基礎を源泉とした分析力、全体を俯瞰してみる力、予測力などを評価してもらっていたのかもしれません。
なお、この「数的な感覚」の価値は、表面的な計算力や数字リテラシーを高めるだけでは気付けません。
計算や数字に弱い人に共通する特徴は「数を認識する力」が弱いということです。計算や数字に強くなろうと思えば、数字で学ぶよりも先に「数の認識」の強化をしなければなりません。「数を認識する」ということと「数字を認識する」ということは全くの別物だからです。表面的な数字の操作を学んだり訓練するだけでは苦手意識を払拭するのは難しいのです。
※「数の認識」の強化はコチラの記事が参考になるかと思います。
実際、以前、大人のための算数教室みたいなところのレッスンを受けたけれども、益々数字嫌いになったという方がいらっしゃいました。その後、弊社のこちらのコースを受講されたのですが、「数的な感覚」を養う為の「数を認識する」トレーニングをしたところ、数ヵ月で劇的に改善されました。数字が苦手な方は数字で学ぶのではなく、まずは数の認識の強化をするところから始めないといけないという典型的な例でした。
パートさんの場合も、それが事務職でなかったとしても、上記で例に挙げた商品の陳列などでは、やはり感覚的なものも必要になるかもしれませんし、ママ友との食事なども、そのお店の大体の価格帯を把握できていれば、出てきた計算結果がおかしい場合に気付けるようにもなるでしょう。
このあたりを総合的な検討して、そろばんをやる必要があるのかどうかをお決めになるのが良いかなと思います。大人は家事や仕事、子育てで多くの時間が必要です。ですから、そろばん学習に時間を割くべきかどうか、というのは、個々の事情によって必要性の有無は変わってくるでしょう。
「大人がそろばんをやる」ということに関しては、実は結構多くの質問が弊社に寄せられます。もし、他に知りたいことなどがあれば遠慮なく、問い合わせフォームからご質問下さい。こちらのコラムを通じて、お名前などを伏せた形で回答させて頂きます。