「せっかく育てたのに、これじゃ柿、食べられへんやん」
そう嘆いているカニの姿を少し遠くから見ていた猿。あんなに立派な柿の実がなるんだったら交換しなきゃよかった、と少し後悔する猿。
「カニさん、久しぶり~」
「あ、お久しぶり」
「どないしたん? 涎なんか垂らして」
「あたし、横歩きしかできんくて木に登られへんから柿が食べられへんねん」
「そら、困ったな。ワシが取ったろか?」
「ほんまに?助かるわー。お礼に何個かあげるから頼むわ」
「よっしゃ、おっちゃんに任しとき~」
猿は木登りはお手のもの。あっというまに柿の実のあるところまでたどり着きます。
「いやー、めっちゃ美味いやん、この柿」
と連呼し食べてばっかり。カニの為に一つも取ってくれません。
「自分ばっかり食べてんと、あたしの分も取ってや~」
「も~、うるさいなー。だったらこれでも食らえ」
そう言うと、猿は青くて固い柿を目一杯、カニに向かった投げつけました。青い柿はカニを直撃。カニは泡を吹いて死んでしまいました。
「へー、カニが苦しいと泡を吹くってほんまやったんや」
変なことに感心しながらも、その後も柿を食べ続けた猿。満腹になったのか、猿は満足して帰っていきました。
ほどなくして、近所に遊びに行っていたカニの子供たちが帰ってきます。
「おかん、どないしてん?」
「おかん、おかん」
「おかん、目開けてくれやー」
子ガニ達は泣きじゃくり母親にすがりつきます。
「誰や、おかんをこんな目に会わせたんは?」
「おい、柿の木を見てみ。朝はいっぱいあった熟したカニが無くなってるやん」
「・・・ん? 熟したカニ? ちゃうちゃう。熟した柿や」
「熟したカニって、なんやねん。確かにおかんは熟女やけどな」
そんな会話を繰り広げながら、おかんを殺ったのは猿だと気づく子ガニ達。
「猿やな。間違いない。これはやっつけなあかん」
すると、そこに栗がやってきます。
「自分ら、どないしたん?」
「うちらのおかんが猿に殺されたんや」
「なんやて? そら仕返しせなあかんな。 おっちゃんも力貸すで」
こうして、栗のおっちゃんが味方になってくれました。
また、ほどなくすると、今度は蜂が飛んできました。
「どないしてん、自分ら?」
「いや、実はな、うちらのおかんが猿に殺されてん」
「なんやて? そら憎いな。 おっちゃんも力貸そか」
今度は蜂のおっちゃんも味方になってくれます。
集団で歩いていると、今度は昆布に出会います。
「わし、昆布やねんけど」
「見たらわかるがな」
「わし、役に立つかな?」
「ん~、微妙やな」
「そんなん言うなや。栗のおっさんと変わらんやろ」
栗のおっさんは昆布にキレました
「栗のおっさん言うな」
「だって、栗のおっさんやんけ」
「せめて、おっちゃんと呼ばんかいっ」
おっさん同志の醜い争いを宥めた子ガニ達は、昆布のおっちゃんも栗のおっちゃんも味方にします。
そんな不毛な争いをそばで見ていたのが臼。
「ワシも力貸すわ。ワシ、体重重いからなんかの役に立つと思うで」
「おーきに。嬉しいわ~」
こうして、おかんを殺した猿の家に向かう一行。道中、作戦を練りながら敵討ちへの強い思いを共有した子ガニとおっさん達。
猿の家に到着した一行は、まず貫禄抜群の臼が叫びます。
「こらー、猿。出てこんかい、ワレ」
しかし、返事がありません。
「臼のおっちゃんのガラの悪さにビビったんちゃう?」
「よっしゃ、ワシがちょっと見てくるわ」
蜂のおっちゃんが偵察に行きます。
「おらんわ。留守やな」
「じゃあ、家の中で待ち伏せよか」
こうして猿の留守宅に忍び込んだ一行。
これは不法侵入ではないのかと思わなくもないが、昔話に不法侵入を持ち出すと話が進まない。
「なんで、こんなトコに高枝切りばさみがあるんや?」
「そういや、おかんが通販で買うてたな」
「これもうちらから盗んだんか。もう絶対許せん!」
「みんなそれぞれ、持ち場につこう」
栗は囲炉裏の灰の中に隠れ、
蜂は水がめの影に潜み、
昆布は床の上に横たわり、
臼は梁の上で待機します。
そこに何も知らずに帰ってきた猿。
「あ~、さぶい。マジでさぶい。さぶ~」
さぶいを連呼し体を温めようと囲炉裏に近づいた猿。その時、囲炉裏で熱々になった栗が猿に突撃。
「熱っ!あつっ!あっつ!滅茶苦茶熱いやんけ。なんやねん、もう。火傷したやんけ」
栗の攻撃で火傷したところを冷やそうと水がめの所へやってきた猿。そこでは蜂が待ち構えていました。やってきた猿を何度も刺す蜂。
「痛っ!いたっ!いった!滅茶苦茶痛いやんけ。なんやねん!」
蜂の攻撃から逃げようと慌てて走り出した猿。すると昆布で滑ってすってんころりん。
「なんでこんなトコに昆布があんねんっ!」
と、立ち上がろうとしたその時、上から臼が、重い身体を目一杯活用してのボディープレス。
最後は子ガニのハサミ攻撃。
「おかんの痛みを思い知れ!」
「熟した柿を返せ!」
「熟女のおかんも返せ!」
返ってきたのは高枝切りばさみだけでしたが、こうして子ガニ達はおかんの恨みを晴らしたのでした。
おしまい

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