川西珠算学院は珠算や珠算式暗算を教授する教室です。そろばん学習を通じて、子供たちに良い教育を提供したいと常々考えています。良い教育というのは、人生を変えるパワーがあります。
そんな私の人生に大きな影響を与えた一つの授業があります。自分のダメっぷりを暴露してしまうようでお恥ずかしいのですが、教育の本質を考えて頂くのに有意義かと思い、今回は恥を忍んで、そのお話をします。
川西珠算学院は15年ほど前から海外での活動をしています。海外の活動で使用する言語は基本的に英語です。そんな私が英語で仕事ができるようになったきっかけと言ってもいい授業です。
遡ること40年程前。私の高校時代の話です。私が行ってた高校は普通の公立高校でしたが、英語教育に力を入れていて、大らかな校風の中、良質の英語に触れる機会が多かったです。
そして、今でも忘れられないのが、高校時代の英語の授業でやった「Roman Holiday=ローマの休日」です。ご存じの方も多いと思いますが、オードリーヘップバーンとグレゴリーペックが主役のとても有名な映画です。
この「Roman Holiday」を一年かけて授業でやるというのです。新学期の最初の授業日にカセットテープを持参するように言われました。当時はMP3プレーヤーどころかMDもなく、レコードに代わってようやくCDが少しずつ出始めた時代です。最初の授業の中で映画を見ながらカセットテープに映画の音声を録音したように記憶しています。
そして、授業の進め方は、ところどころ空欄になっているスクリプトのプリントが配られて、次回までに(映画の音声を録音した)カセットテープを聞いて、穴埋めをしてくるように、という課題(宿題)が毎回出されていました。それを授業の中で映画を見ながら答え合わせをして、映画を見進めていくというものでした。
今でも最初の課題の一部を覚えています。
I hate this nightgown.
I hate all my nightgowns.
のhateが空欄になっていました。
※hateはヘイトスピーチのヘイトで、嫌いという意味です。
そんな授業が毎回繰り返されるのですが、当時、私の学年はA組からL組までの12クラス。すべてのクラスで同じ課題をやるので、その授業が先行するクラスの友人に聞けば、ブランクになっているところはわざわざカセットテープを聞かなくても簡単に埋めることができます。ズルですけど。
私も(私は?)不真面目だったので、ご多分に漏れず、授業が先行している部活の友人に聞いて、宿題を済ませていたと思います。
数年前に、当時の英語の先生に教えてもらったのですが、そういうズルをする生徒がいっぱいいて、(短期的に見て)英語の学力アップという点では問題があった為か、私たちの代の一年だけで、この授業は無くなったそうです。
しかし、断言します。
私が今、海外で、英語で仕事ができているのは、その「Roman Holiday」の授業があったからです。この「Roman Holiday」を一年間、授業でやったおかげで(・・・と言っても勉強したとは言えないですが)、その後、ずっと、今に至るまで、英語に対してマイナスのイメージを持つことなく、とても良いイメージを持ち続けられている。英語に対しての興味を良い形でずっと持ち続けられている。英語でのコミュニケーションが楽しいと思えている。だからこそ、英語力も日々アップするし、今、英語で仕事ができているんです。英会話教室には一度も通ったことはありませんが、実務の英語ができるようになったのは、この授業のおかげと言っても過言ではありません。
教育って、目先の受験とか数年を乗り切ることではなく、その人の一生を左右できるものだと最近、私は心底、思います。高校時代に、この授業をやりたいと言ってくれた先生には、どれだけ感謝をしてもしきれないくらいの感謝をしています。また、私たちのズルのせいでこんな素晴らしい授業を受けられなかった後輩には申し訳ない気持ちも強いです。
ところで、2年ほど前ですが、私が直接、そろばんを教えていた生徒から電話をもらいました。就職活動の書類にそろばんのことを書きたいので、どのように書けば良いかという相談でした。
その生徒のことはもちろんよく覚えていました。本人の名誉の為に詳細は書きませんが、とてもコンプレックスが強く、自分に自信が持てない生徒でした。当時、懇談などで保護者と色々と話をしました。生徒本人は私と保護者がそんな話をしていたことは知らないでしょうけど、どうすれば将来、自信を持って生きていけるか、その子にとって今一番大切なことは何かなどを話し、粘り強く、色々な働きかけをしたことを今でも覚えています。
就活については、色々と助言はしましたが、後日、第一希望の仕事に就くことが決まったと律儀に連絡をくれました。私のアドバイスが有効だったのかどうかはわかりませんが、無事に決まって良かったね、とそれまでの頑張りを労ったところ、
「今の僕があるのはそろばんをやったからです。あの6年は僕の人生にとって貴重なものです。先生のところで習って本当に良かったです」
と言ってくれました。とても有難かったです。彼が川西珠算学院で学んでくれたことは、私にとってのローマの休日のような授業だったのかもしれないと思うと、とても嬉しい気持ちになりました。と同時に、これからも教育の本質を追求していこうと、決意を新たにしました。
川西珠算学院にもズルをする生徒、サボる生徒などはいます。私もズルをしていたクチなので偉そうなことは言えませんが、保護者の皆様ともしっかりとコミュニケーションをとり、一緒に協力をして、子供たちを育てていきたいと考えています。