今の小学1年生と2年生の学習は、理科と社会の代わりに生活科という科目で学習します。理科と社会に代わり、生活科が設置されてから30年ほどになるので、今の小学校低学年のお子さんの保護者が小学生くらいの頃に学習指導要領が改訂されたということになるでしょうか。
教育学上、これはとても理にかなった改訂であり、教育の専門家から見ると至極真っ当なアプローチです。理由はいくつかありますが、一番大きな理由としては、学習は具体的な体験から入らないと、そもそもの事象が理解できないケースが多く、結果、学習意欲に悪い影響を与えるからです。
子供たちの学習は、具体的な事象からはじめ、少しずつ抽象的・一般的な学習に進めていく必要があります。特に幼児期から初等教育期はこの順番を間違えると、勉強が嫌いな子供が出来上がってしまいます。当たり前ですが、小学生にいきなり、ベクトルや微分や積分を教えても理解ができませんし、原子だとか分子だとかの話をしても具体的なイメージができないため、何も頭に残りません。
大人にとっては「数字」というのは数量を表わすのにとても明快なものであり、とても具体的事象(学習項目)に感じる方もいるでしょう。しかし、幼児にとっては「数字」は単なる記号に過ぎません。例えば、皆さんは以下の式が理解できますか?

+と=があるので計算式かな、という検討はつくかもしれませんね。これはアラビア語の数字で書いたもので、「3+4=7」と書いてあります。大人の皆さんも3,4,7のアラビア語をご存じなければ、単なる記号としか感じないのではないでしょうか。まして計算式を学習する前の子供は+や=の意味さえ知りません。
では、学習の順番を間違えることなく、勉強に興味を持つように仕向けるには、幼児期から小学生の間は、どのような教育をすれば良いのでしょうか。それは、目で見てわかる、実感できる具体的な体験を意識的にさせてあげることです。これだけでは、あまりピンと来ないかもしれませんので、具体的な方法を挙げておきます。
例えば、飛行機に乗る機会があった時には、お茶などのペットボトル飲料を機内に持ち込みます。機上では、そのペットボトルの蓋を開け、半分程度以上は飲みます。着陸すると気圧の関係でペットボトルが凹んでいるはずです。できれば子供たちに意識してもらえるように、機上での状態を見せておきます。気圧のことを習う前に、こうした経験をさせておくのです。具体的事象から興味が湧き、一般的な学習が格段に身につきやすくなります。知らないことを学ぶことの楽しさを少しは感じることもできます。
あるいは、夏休みに海水浴に行く場合、わざわざ大潮の時を狙って、できるだけ遠浅になっている海水浴場を選ぶというのも良い経験になるかもしれません。大潮ということは干満の差が大きいということです。予め干潮時間と満潮時間を調べておき、その二つのタイミングで、子供と一緒に遠浅の海に入ると、さっきは足のつかなかった場所が胸あたりの水位になったり、その逆になったりします。大潮ということは満月か新月ですから、こうしたことを絡めてうまく経験をさせると月の満ち欠けにも興味が出てくるかもしれません。
今回はスペースの関係で2つの例しか挙げませんでしたが、他にも色々な方法があります。まずは、できるだけ子供達が不思議に感じるような、知らないことを学びたくなるような、興味をもつような経験をさせてあげることが大切です。「勉強しなさい」という声掛けよりも遥かに自分から「学ぶ」ということに前向きになってくれます。
ちなみに、そろばんも「数字の操作」という抽象的なものではなく、目で見て数がわかる具体物(半具体物という言い方をすることが多いです)を使って行う学習です。この為、幼児期から初等教育期の学習に適しているということが言えます。